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横浜地方裁判所 平成6年(ワ)1889号 判決

ドイツ連邦共和国アーヘン市ユリツヘル・シュトラーセ三〇六番

原告

エレガンス・ロルフ・オッフエルゲルト・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング

右代表者

ミリアム・ステファン

右訴訟代理人弁護士

磯部健介

近藤恵嗣

横浜市緑区美しが丘五丁目一四番一〇号

被告

エレガンスこと 佐藤孝子

右訴訟代理人弁護士

西村寿男

右訴訟復代理人弁護士

長尾敏成

主文

一  彼告は、別紙標章目録一の標章を表示した店舗のネームープレートを廃棄せよ。

二  被告は、店舗の看板及びショーウインドウに表示された右標章目録一の標章を抹消・削除せよ。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを四分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、別紙標章目録一ないし三表示の標章を被服若くはその包装に付し、又はこれを付した被服等を販売し若くは販売のために展示してはならない。

2  被告は、右一及び二の標章を表示したネームプレート及び右三の標章を表示したショッピングバックを廃棄せよ。

3  被告は、看板及びショーウインドウに表示された右一及び二の標章を抹消・削除せよ。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

5  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(当事者)

(一)  原告は、ドイツ連邦共和国アーヘン市に本店を有する、流行着、衣料品、化粧品、アクセサリーの通信販売等を業とする法人である。

(二)  被告は、横浜市緑区あざみ野一丁目一二番九号レジデンス松本一F-Aにおいて「azamino Elegance」との店名にて、婦人用被服等の販売を業としているものである。

2 (商標権の侵害)

(一)  原告は、商標法施行規則旧別表商品区分第一七類に属する被服等につき、別紙商標目録一ないし四記載の各登録商標(以下、それぞれを「本件商標一」ないし「本件商標四」といい、それらのすべてを指す場合に「本件商標」という。)について商標権を有している。

(二)  被告は、本件商標の指定商品である被服等について別紙標章目録一及び二記載の標章を店舗の看板、ネームプレート、ショーウインドウに、同目録三記載の標章をショッピングバックにそれぞれ表示して使用している(以下、それぞれを「被告標章一」ないし「被告標章三」といい、それらのすべてを指す場合に「被告標章」という。)。

(三)  本件商標と被告標章一は類似している。

(1) 本件商標と被告標章の構成及びその特質

本件商標一は、ローマ字の「e」を右側に配し、これと接するように左側に「〓」(ローマ字の「e」を一八〇度回転させたもの)を配置した図案化標章であり、本件商標二は、本件商標一と文字(「Elegance」)とを結合させ、かつ右側の「e」の内側(中央より上方)に小さな四葉用の図形を施した標章である。また、本件商標三は、本件商標一の下に文字「Elegance」を結合した標章であり、本件商標四は、本件商標一の右横に文字「Elegance」を結合した標章である。

他方、被告標章一は、本件商標一の「〓」の代わりに「a」を配し、右側の「e」の文字の内側(中央より下方)に小さな四葉様の図形を施した図案と文字(図案の右側上段に「azamino」及び同下段に「Elegance」)とを結合させた標章である。

ところで、被告標章一は、その構成要素である左側の図案と右側の文字とが物理的間隔によって切り離され、その結びつきが極めて弱いのみならず、左側の図案は右側の文字と比し、極めて大きく、かつ人目を引く特異な形態で記載されている。したがって、被告標章一中の右図案部分(被告標章二)は、それ自体独立して出所表示(自他商品識別表示)としての機能を果たすものといえる。

また、本件商標二においても、その構成要素である図案部分(本件商標一に四葉様の模様を加えたもの)は、文字部分と比べ、極めて大きく人目を引く形態で記載され、しかも、本件商標一が指定商品などに関し世界的にも極めて著名な商標であり、本件商標二の図案部分がそれとの結び付きを極めて容易にうかがわせるものであることに照らせば、本件商標二の図案部分も、それ自体独立して出所表示としての機能を果たすものといえる。

なお、被告標章三は、被告標章一と基本的構成及び特質において同一であり、被告標章一と同様のものと考えることができる。

(2) 本件商標及び被告標章との類似

まず、本件商標一(あるいは、自他商品識別機能を有する本件商標二の図案部分)と被告標章二(図案部分)を比べてみると、両者は、

〈1〉 ローマ字二文字からなるモノグラムをベースとしている点、

〈2〉 二文字を左右に接触させて、かつ交差しないように配置している点、

〈3〉 左右の二文字の大きさをほぼ均等にしている点、

〈4〉 右側の文字にローマ字の「e」を配している点

で全く同一である。

のみならず、かかる標章の左側に配置された他方の文字の形態も判別不可能なほど酷似している。すなわち、本件商標一は「〓」を、被告標章二は「a」をそれぞれ採用しているが、被告標章二では「〓」と比較しての「a」の特徴である右下に飛び出た部分がその右側に位置する「e」の文字と全く重なっているため、本件商標一の構成要素である「〓」と全く同じ形態の文字であるかのように見える。

更に、本件商標二と被告標章一とをそれぞれ文字部分を含めて観察しても、図案部分と「エレガンス」との呼称を有するアルファベット文字とを結合している点で共通であり、しかも「エレガンス」との呼称を有する文字の表記の仕方(外観)も頭文字だけを大文字とし、他を小文字としている点で共通している。

このことは、被告標章一と基本的構成を一にする被告標章三にも当てはまる。

以上の事実に照らせば、本件商標と被告標章とが、その全体の構図において極めて類似し、その外観において極めて紛らわしいものであることは明らかである。

なお、本件商標と被告標章とを逐一対比して観察すれば、「Elegance」の文字の表記等わずかな相違点を看取することができるが、このような些細な違いは両標章の類似を判断する上で問題にならない。

また、本件商標三及び四と被告標章一とを比較すると、ローマ字二文字からなるモノグラムをベースとした類似の図案部分に「エレガンス」との呼称を有するアルファベット文字とを結合している点でいずれも共通する。

しかも、「エレガンス」との称呼を有する文字の表記の仕方(外観)も頭文字だけを大文字とし、他を小文字としている点で全く同一である。更に、本件商標四と被告標章一とでは、図案部分とアルファベットの文字部分の配置まで同一である。

なお、本件商標一ないし四は、同一指定商品についての連合商標(商標法七条)であり、これらは互いに類似の関係にあることが認められている。

3(結論)

よって、被告標章の使用が商標法三七条一項に規定する「侵害とみなされる行為」に該当するから、原告は、被告に対し、請求の趣旨記載の判決を求める。

なお、被告が被告標章に強い愛着を抱いていることなどからみて、将来、被服及び包装紙にこれを付する等する可能性は極めて高く、また、ショッピングバックについては、現在、被告標章を付していないとしても、同様、将来、これを付する可能性は十分にある。また、被告標章二については、被告は、被告標章一について、結合商標ではないとも主張しているので、その使用を差し止める必要がある。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(一)は不知。

同1(二)は認める。

2  同2(一)は不知。

同2(二)のうち、被告が、被告標章一を店舗の看板、ネームプレート、ショーウインドウに表示して使用していること及び被告標章三を、以前にショッピングバックに使用していたことは認め、その余は否認する。

現在は、被告は被告標章三をショッピングバックに使用しておらず、また今後も使用する予定はない。

同2(三)(1)は否認する。

被告標章は、図案と文字が一体として組み合わされた商標である。

同2(三)(2)は否認する。

本件商標と被告標章とは類似していない。

3  同3は争う。

三  被告の主張

1  本件商標一と被告標章二は類似していない。

(一) 本件商標一は、アルファベットのeを左右に組み合わせるとともに左側のeを上下逆にしたものである。しかし、被告標章二はaとeを左右に組み合わせたものであり、またeもaも上下逆にせずにそのまま組み合わせたものである。

(二) 本件商標一は、アルファベットのeを組み合わせたものにすぎないが、被告標章は、右側のeの部分に四葉のクローバーの図案がある。

(三) 本件商標一は、縦長の図形であるが、被告標章二は丸形の図形である。

(四) 本件商標一のeという文字は、太い部分と細い部分が明確に強調された字形となっているが、被告標章二のaとeの文字は同じ太さで構成されており、ゴシック体である。

(五) なお、アルファベットを左右に組み合わせるという考案は一般的なものであり、またアルファベットを左右に組み合わせて片方を上下逆にするという考案も一般的なものであり、このような考案に特別顕著性はない。

(六) 右のとおり、本件商標一と被告標章二とは外観上明らかに異なっており、商品の識別及び商品の出所について混同を生じさせるものではない。

2  本件商標二と被告標章一は類似していない

(一) 本件商標二は、本件商標一のeを組み合わせた図形とEleganceの文字と紋様の組合せの結合商標である。

しかし、被告標章一は、aとeの文字の組合せ(被告標章二)とazamino Eleganceが結合したものではない。

すなわち、被告標章一は、被告標章二の右横に店の屋号である「あざみ野エレガンス」をローマ字で書き、店の屋号を表示したにすぎない。

(二) 仮に被告標章一がマーク(被告標章二)と文字の結合した標章であるとしても、本件商標二とは次のとおり類似していない。

(1) 前記のとおり、本件商標一と被告標章二とが類似していない。

(2) 原告の結合商標の図形のうち、エレガンスという字の形が被告標章一のエレガンスという字の形と異なっている。つまり、原告のエレガンスという文字の太さは、eの組み合わせた図形の太さに比較して極めて細いものであるが、被告のエレガンスという文字の太さはaとeを組み合わせた図形の太さと同じである。

(3) 原告の図形のエレガンスの文字は、eを組み合わせた図形の左側にあり、かつ組み合わせた左側の逆eの文字の内側に食い込むように配置されているが、被告の図形のエレガンスの文字は、aとeを組み合わせた図形の右側にあり、かつ組合せのeの文字の外側に表示されている。

(4) 原告の図形のエレガンスの文字と被告の図形のエレガンスの文字とはeとgの文字が異なる。つまり、原告の商標の文字eは被告標章ではeとなっており、原告の商標の文字gは被告標章ではgとなっている。

(5) 原告の商標は、eを左右に組み合わせた図形とエレガンスのドイツ語文字を組み合わせているが、被告標章はaとeを左右に組み合わせた図形とあざみ野エレガンスのローマ字を組み合わせたものである。

(6) 原告の商標は、eを組み合わせた図形の右側のeの上部に複雑な紋様が表示されているが、被告の標章では右側のeの下部に単純な四葉のクローバーが表示されている。

(7) なお、エレガンスという文字そのものは、社会生活上一般に用いられているものであり、原告の商標としての特別顕著性はなく、登録商標とはなりえない。

(三) 以上のとおり、本件商標二と被告標章一とは外観上明らかに異なっており類似しているものではなく、商品の識別及び商品の出所について混同を生じさせるものではない。

3  被告は被告標章一、二を商品に使用しているものではないので、商標権の侵害に該当しない。

(一) 被告は、田園都市線あざみ野駅の近くにおいて「あざみ野エレガンス」という屋号で小規模な洋服等の小売店舗を経営しているが、右店舗は、面積一六坪、従業員一名(販売担当)のものであり、販売商品は、洋服、アクセサリー、靴、バックである。

(二) 被告は、昭和五四年四月二三日、右店舗を開業し、昭和六一年一月二八日にその改装工事を行い、新装開店したが、その約一か月前である昭和六〇年一二月ころ、右店舗の屋号を表わすマークとして被告標章二を考案した。

そして、被告は、右改装された店舗に被告標章二と右標章の右横に「アザミノ・エレガンス」というローマ字を掲げ、店舗の屋号を表示した。

(三) その後、被告は、平成五年四月一日、小野田慎一に右あざみ野エレガンスの店舗の経営を委託したところ、同人は店舗の入口の上部とショーウインドウに被告標章二及び「アザミノ・エレガンス」の屋号を掲示するとともに、ショッピングバックに被告標章三を使用した。

(四) その後、被告は、平成六年三月六日、小野田慎一との店舗委託契約を解約し、以後再度右店舗を自ら経営し、現在に至っている。

(五) 被告は、前記のとおり本件店舗において洋服、靴、バック、アクセサリー等を小売販売しているが、右商品は卸売会社又は製造会社から購入したものである。

そして、被告は、右商品を製造したメーカーのブランド名並びにその商標で販売しており、被告標章を付した商品を販売してはいない。

したがって、被告の標章使用により、原告の商品と被告販売の商品とが、商品の識別及び出所について混同されるということはない。

被告は店舗の屋号である「アザミノ・エレガンス」の名前を、被告標章二とともに店舗入口及びショーウインドウに掲示しているにすぎないから、原告の商標を侵害していることにはならない。

(六) なお、被告は現在ショッピングバックに被告標章三を使用していない。

被告標章三を使用したショッピングバックは、小野田慎一が製作したものであり、小野田慎一との委託契約を解約した後、被告は、何も表示していないショッピングバックを使用している。

四  被告の主張に対する認否及び原告の反論

1  被告の主張に対する認否

被告の主張1及び2は否認ないし争う。

同3の冒頭部分は争う。

同3(一)のうち、被告が田園都市線あざみ野駅の近くにおいて、小規模な洋服等の小売店舗を経営していること、及び右店舗において洋服、アクセサリー、靴、バック等の小売販売を行っていることは認め、その余は不知。

同3(二)ないし(四)はいずれも不知。

同3(五)のうち、被告が洋服、アクセサリー、靴、バック等の販売を行っていることは認め、その余はいずれも否認ないし争う。

同3(六)は不知。

2  原告の反論

(一) 被告は、被告標章二の左側のアルファベットの文字は「a」であると主張するが、実際の外観は「〓」とほとんど異ならない。

また、被告標章二の右側の「e」の部分のクローバーの図案については、同じような図案は、本件商標二の右側の「e」の部分にも存する。

被告は、本件商標一は縦長、被告標章二は丸形であると主張するが、被告標章二も縦の方が横よりも長い縦長であることには変わりがない。

また、文字の太さについても、被告標章二にも、本件商標一のような太い部分と細い部分との区別は存在するものであり、程度の差があるにすぎない。

被告は、アルファベットを左右に組み合わせるという考案、その片方を上下逆にするという考案につき、いずれも一般的であって顕著性がないと主張するが、標章の類似性の判断とは関係がない。

(二) 被告が主張する、被告標章一と本件商標二の「e」と「g」の表記態様の違いは、微差といえるものであり、またエレガンスという文字と図形との相対位置についても、原告商標が連合商標の関係にあることからすれば、位置の差は類似性判断に影響を与えない。

更に、被告は、被告標章一は図案と文字との結合標章ではないと主張するが、これは請求原因に対する被告の答弁と矛盾している。

(三) 被告が被告店舗において、洋服、アクセサリー、靴、バッグ等の販売を行っており、被告標章をショーウインドウの陳列ボードにおいて、被告商品の真上に、その商品のブランド名を示すかのように表示していること等からして、被告は、被告標章を、商標として使用していることは明らかである。

第三  証拠

本件記録の書証目録及び証人等目録記載のとおりである。

理由

一(争いのない事実等)

1  被告が、請求原因一の1(二)記載の所在地において、「azamino Elegance」との店名で、婦人用被服等の販売を行っていること、被告が、店舗の看板、ネームプレート、ショーウインドウに、被告標章一を表示して、これを使用していること、被告が、被告標章三を、かつてショッピングバック(手提げの買物袋)に付して使用していたことは当事者間に争いがない。

2  成立に争いのない甲二、三号証の各一、二、九、一〇号証の各一、二によれば、原告が本件商標一ないし四につき商標権を有し、それら各商標は連合商標となっていることが認められる。

二1(被告標章一と本件商標の類似について)

被告標章一は、別紙標章目録一のとおり、アルファベットの、「a」と「e」とを組み合わせて特徴的な図案とした部分と、店名の「azamino Elegance」をアルファベット表記した部分とを組み合わせたものであり、店名を表記した部分もアルファベット部分と組み合わされることにより、全体として標章としての機能を営んでいるものと認められる。

ところで、本件商標一は、別紙商標目録一のとおり、「〓」と「e」とを組み合わせて図案としたものであり、またそれと連合商標の関係にある本件商標二ないし四においては、同目録二ないし四のとおり、本件商標一と同一の図案をもとにそれとエレガンスとの呼称を生ずるアルファベット表記によって構成されている。

そこで、これを前提にして被告標章一と本件商標との類比を判断する。

被告は、本件商標一は、「〓」と「e」とを組み合わせて図案としたことに特徴を有するところ、被告標章一は、「a」と「e」とを組み合わせたものであるから類似しないと主張し、確かに両者は使用する文字が異なっているが、被告標章一の「a」部分は、「e」に接して組み合わされている結果、本件商標一の「〓」との差は、その文字中央部の横線が、直線であるか(「〓」)曲線であるか(「a」)に過ぎないものとなっており、全体的な外観には大差がないものといわねばならない。

また、被告標章一には、「e」文字中に四葉のクローバーが表示されているが、前掲甲三号証の二によれば、本件商標一と連合商標の関係にある本件商標二にも、四葉のクローバー様の図案が「e」文字中に存し、また、エレガンスの呼称を有するアルファベット表記についても、本件商標四と被告標章一とでは、別紙商標目録四と別紙標章目録一のとおり、「e」と「g」の文字について若干の違いはあるものの、最初の文字を大文字とする構成や、文字全体の外観に大差はなく、結局被告標章一と本件商標とはその外観において類似するものと認められる。

2(被告標章一の商標としての使用について)

被告は、被告店舗で販売している商品については被告標章を付しておらず、また、被告標章一の「アザミノエレガンス」の文字部分については店舗の屋号を表示しているにすぎないから、原告の商標権を侵害しないと主張する。

被告が、店舗の看板、ショーウインドウ、ネームプレートに被告標章一を表示していること、右店舗において婦人用被服等を販売していることは前記のとおり争いのないところ、成立に争いのない甲七号証によれば、被告標章一は、店舗入口付近(看板は上部、ネームプレートは向って右側)、ショーウインドウ(上下二か所)の人目を引く位置に相当の大きさ(一部は赤色)で表示され、しかも右ショーウインドウ内には、被告販売にかかる婦人用被服等が展示されていることが認められるから、被告標章一は、商品の出所表示機能を営むというべきであり、結局、商標としての使用に当たるというべきである。被告の主張は理由がない。

3(被告標章二の使用について)

原告は、被告商標一のアルファベットの「a」と「e」とを組み合わせた図案部分だけを被告標章二とし、これのみで独自の出所表示機能を有するとして、それを表示したネームプレートの廃棄及び看板、ショーウインドウに表示された同標章の抹消・削除を求めている。しかし、被告において被告標章二を被告標章一とは別に単独で使用し、または使用したことがあることについては主張、立証がないし、被告が将来、これを使用するおそれのあることを裏付けるに足りる的確な証拠もない。したがって、被告標章二が独立した出所表示機能を営むか否かについてはともかくとして、被告標章二にかかる原告の請求は理由がない。

三(ショッピングバックに関する被告標章の使用について)

1  被告が、以前に被告標章三をショッピングバックに付していたことについては前記のとおり争いがないところ、被告本人尋問の結果によれば、被告において被告標章三を付したショッピングバックを使用していたのは、かつて被告が被告店舗の経営を小野田慎一に委せていた平成五年三月から同六年二月ころまでの時期に限られ、それも小野田の発案によるもので、同人に辞めてもらった後は、そのショッピングバックを使用していないこと、被告自身は、小野田が製作した被告標章三を付したショッピングバックを気に入っておらず、使用する気持はないこと、現在、被告店舗に小野田製作のショッピングバックは残っていないことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

2  原告は、たとえ現在被告がそのショッピンバックを使用していないとしても、将来において再びそのショッピングバックを使用するおそれがあると主張するが、右認定事実によれば、そのようなおそれがあると認めることはできす、他にこれを認めるに足りる証拠もない。

したがって、ショッピングバックに関する原告の請求は理由がない。

四(被服等に関する被告標章の使用について)

原告は、請求の趣旨1において、被告が被服及び包装(以下「被服等」という。)に被告標章を付すること並びにこれを付した被服等を販売若くは販売のため展示することの禁止を求めている。

しかし、被告が、現在その販売に係る被服等に被告標章を付していることについては、主張、立証がなく、また、被告本人尋問の結果によれば、被告は被告標章一に強い愛着を抱いていることは窺われるが、これまでその販売商品に被告標章を付したことはないこと(販売商品は、製造会社の商標等の付いたものか、被告製作にかかるものであり、後者については、従前から英語の筆記体のエレガンスのマークを付していること)が認められることなどからすると、被告において将来被服等にこれを付して販売ないし販売のための展示をするおそれがあるとは認められず、他にこれを認めるべき証拠もない。したがって、右請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。

五(結論)

以上の次第であるから、原告の本訴請求は、主文掲記の範囲内において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を適用し、仮執行宣言については相当でないのでこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 秋武憲一 裁判官 今井弘晃)

(別紙)

標章目録

〈省略〉

(別紙)

標章目録

〈省略〉

(別紙)

商標目録

一 登録番号 第1554857号

登録商標 商標公報記載(下記写添付)のとおり

出願日 昭和50年11月20日

(商願昭50-135201号)

公告日 昭和55年9月2日

(商公昭55-030216号)

登録日 昭和57年12月24日

更新登録 平成5年7月29日

指定商品 旧別表第17類 被服、その他本類に属する商品

商標出願公告 昭55-30216

公告 昭55、9、2

商願 昭50-135201

出願 昭50、11、20

連合商願 50-135202

出願人 エレガンス・ロルフ・オツフエルゲルト・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレソクテル・ハフツング

ドイツ連邦共和国51アーヘン市ユリツヘル・シユトラーセ306番

代理人 弁理士 湯浅恭三 外2名

指定商品 17 被服、その他本類に属する商品

〈省略〉

二 登録番号 第2216883号

登録商標 商標公報記載(下記写添付)のとおり

出願日 昭和54年9月28日

(商願昭54-073670号)

公告日 昭和63年10月21日

(商公昭63-081571号)

登録日 平成2年3月27日

指定商品 旧別表第17類 被服、布製身回品、寝具類

商標出願公告 昭63-81571

公告 昭63(1988)10月21日

商願 昭54-73670

出願 昭54(1979)9月28日

連合商標 1554856、1554857

連合商願 昭54-73671、73672

出願人 エレガンス・ロルフ・オツフエルゲルト・ゲゼルシヤフト・ミット・ベシユレンクテル・ハフツング

ドイツ連邦共和国51アーヘン市ユリツヘル・シユトラーセ306番

代理人 弁理士 湯浅恭三 外2名

審査官 川津義人

指定商品 17 被服、布製身回品、寝具類

〈省略〉

(別紙)

商標目録

三 登録番号 第2669512号

登録商標 商標公報記載(下記写添付)のとおり

出願日 平成2年2月8日

(商願平2-13249号)

公告日 平成5年8月23日

(商公平5-91901号)

登録日 平成6年5月31日

指定商品 第17類 被服、布製身回品、寝具類

商標出願公告 平5-91901

公告 平5(1993)3月23日

商願 平2-13249

出願 平2(1990)2月3日

連合商標 1554857、2216883、2216884、2216885

出願人 エレガンス・ロルフ・オツフエルゲルト・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング

ドイツ連邦共和国51アーヘン市ユリッヘル・シユトラーセ306番

代理人 弁理士 湯浅恭三 外2名

番査官 小宮山貞夫

指定商品 17 被服、布製身回品、寝具類〔国際分類5、9、10、16、17、20、21、22、24、25〕

〈省略〉

四 登録番号 第2669513号

登録商標 商標公報記載(下記写添付)のとおり

出願日 平成2年2月8日

(商願平2-13250号)

公告日 平成5年8月23日

(商公平5-91902号)

登録日 平成6年5月31日

指定商品 第17類 被服、布製身回品、寝具類

商標出願公告 平5-91902

公告 平5(1993)8月23日

商願 平2-13250

出願 平2(1990)2月8日

連合商標 1554857、2216883、2216884、2216885

出願人 エレガンス・ロルフ・オツフエルゲルト・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング

ドイツ連邦共和国51アーヘン市ユリツヘル・シユトラーセ306番

代理人 弁理士 湯浅恭三 外2名

番査官 小宮山貞夫

指定商品 17 被服、布製身回品、寝具類〔国際分類5、9、10、16、17、20、21、22、24、25〕

〈省略〉

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